「17音の小宇宙―田口麦彦の写真川柳」
 
第8回 2009/08/14




  デイゴ咲いて火焔放射器まだ消えぬ

 Photo by (c)Tomo.Yun
  沖縄戦は、太平洋戦争末期に1千数百の船が侵攻してきて50万余の連合国軍と11万余の日本軍とが激突した一大決戦であった。狹小な沖縄で展開された激戦の模様は、一米従軍記者が「戦争の醜さの極致だ。」(『これが沖縄戦だ』大田昌秀編著、琉球新報社)と述べたことばそのままの悲惨さであった。
 この一文が冒頭に書かれた写真集は沖縄全土を戦場とし、地元住民を戦争に巻き込んでしまったおろかさを鮮明に記録している。
 沖縄戦の戦死者は日本側が244,136人、アメリカ側が12,520人(米国陸軍省編『日米最後の戦闘』)とされ、約26万人の尊い命が失われた。当時の沖縄の人口の三分の一にあたる15万人強の非戦闘員が戦火の犠牲になったことを知るにおよんで何ともやりきれない気持ちになった。
 戦後はじめて沖縄を訪れたとき私が目にしたのは真紅の花を咲かせる梯梧(でいご)だった。ひめゆりの塔、健児之塔、摩文仁が丘などの戦跡に咲くインド原産のでいごの木の赤い花花は、まさに火焔放射器から噴き出す炎の色であった。

(c)Mugihiko Taguchi


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