「17音の小宇宙―田口麦彦の写真川柳」
 
第14回 2009/09/25



    海苔竹のすっくと立って生きる意志
   

Photo by ajisai kitamura

 有明海の海苔養殖地を望遠レンズで撮った写真である。撮影者は、わが「ふんえん」同人で編集を担当している北村あじさいさん。
 「ふんえん」(川柳噴煙吟社)2008年12月号の表紙を飾った。
 有明海は九州中西部の大湾入。福岡・佐賀・長崎・熊本の四県に囲まれている。
 潮の干満の差は最大六メートルで日本最大である。干潟のムツゴロウ・ワラスボは有名。
 海苔や貝類の養殖が盛んで、沿岸は広大な干拓地になっている。
 海苔の養殖は寒い季節に、海中の干拓に建てられた海苔網で行われ、その支柱となる棚が海上に突っ立てられている。私たちが毎日食する海苔は、海苔篊(のりひび)という道具に付着させ成長したものを収穫するのだという。
 大敵は、いわゆる赤潮の発生。水面近くで鞭毛(べんもう)藻(虫)やケイ藻などのプランクトンが爆発的に増殖して一帯の水が赤く変わって見える現象である。
 品質がいのちの海苔養殖にとっては致命的な被害であり、温暖化などの環境変化もあって深刻な問題になってきている。
 海苔養殖はバクチみたいなもの――と自嘲する人たちの嘆きをわが身に降りかかることとして捉えられるかどうか、私も自信がない。
 写真画像の一直線の竹は、その人間が生き抜く意思そのもののように感じられて詠んだ一句である。画面手前に小さく見える鳥たちもまた母なる海の幸をついばんで生きている。生きるものに恵みを与えてくれる海を、山をそして空を汚すものはだれか。
 その問いはみずからに、こだまとして返ってきている。



(c)Mugihiko Taguchi

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