感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第30回 2009/09/08   


  原 句  秋暑し乗り越して来し句会かな

 句会に遅れてきた人の句です。
 うっかり乗り越してしまい、大汗をかきながら小走りに会場に急いだのでしょう。秋の容赦ない暑さに負けてしまいそうな気持ちで、ようやく辿り着いた句会です。
 さて、この句は「句会かな」で挨拶句ともなっているのですが、どうしてもここが説明的に感じられます。
 思い切って、残暑の中、電車を乗り越してしまったということだけを言えば、季語と相俟って臨場感が出るのではと思います。
 いちばんいいたいことが何か考え、出来る限り余分なものを省きます。

  添削例  一駅を乗り越して秋暑きかな


 

  原 句  鳥の羽はらりと落ちて水の秋

 「水の秋」は水もどこか秋めてきたという感慨を表現する季語です。
 さり気ないけれど、景をよく見せてくれる句です。象徴的な映像です。
 ただ、一句はやや説明に傾いているように感じられます。もう少し生き生きと水面が見えてくるように工夫しましょう。その一つの案として。

  添削例  鳥の羽はらりと乗つて水の秋




 水平線

(c)kyouko ishida
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