火の歳時記

NO62 平成2147


片山由美子

 
  【火の話】第8回 「火炎地獄」

 火は、狂気や恐怖の象徴ともなる。洋の東西を問わず地獄図には必ず炎で焼き殺される人間が描かれている。水責めも苦しいだろうが火あぶりはもっと恐ろしい。想像しただけでも、そんな目には絶対遭いたくないと思うだろう。そこで、火炎地獄に落とされないようまっとうに生きよというのが地獄図の書かれた目的である。同時に極楽図も見せて身を慎むよう諭すのが地獄極楽図の常だ。

 くれなゐの炎燃えたつ火車に亡者を載せて白き鬼引く  斎藤茂吉
 (いひ)の中ゆとろとろと上る炎見てほそき炎口(えんく)のおどろくところ  同


 斎藤茂吉の第一歌集『赤光』には、こうした「地獄極楽図」と題する十一首が収められている。茂吉の生家は宝泉寺という寺の隣にあった。そこには有名な地獄極楽図があり、
茂吉はこれを見て育ったという。その印象が強烈だったらしく、のちに歌にまでしているのである。
 海を渡り、フランドルの画家ヒエロニムス・ボスの描いた「最後の審判」を覗いてみよう。ウィーンの美術史美術館蔵のこの絵にも、地獄に落とされた人間の姿が描かれている。しかしながら、フライパンで焼かれている人間など、日本の餓鬼草子とくらべると、いささかユーモラスに見える。
   

 
 (c)yumiko katayama
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