火の歳時記

NO64 平成21421


片山由美子

 
  【火の話】第9回 「火山」

 火の発見のひとつとして、人間が火山から火をもらったことは以前書いたと思う。自然発生した火だから便利ではあるが、火山の噴火は古代の人々を恐怖におののかせたに違いない。御神火(ごじんか)という呼び方には、恐怖を超えた畏怖が感じられる。火山を詠んだ俳句も多いのである。

  火の島を去る春昼の虚ろ抱き         伊藤白潮
  溶岩に椿の林途切れけり         長谷川かな女
  ご神火を鎮めて東風の島祭          高橋克枝
  噴煙の渦巻く熔岩(らば)にゐて春愁        加藤かけい
  御神火の火の粉を盗み椿炎ゆ        鍋谷ひさの
  火の島は夏オリオンを暁の星        中村草田男
  夏霧に火の山沈み我沈み           村松紅花
  火の山に火を見ず熔岩の冬鴉         小宅容義


 以上は伊豆大島。

  熔岩流れ入りたる海に泳ぎをる        山口誓子
  いたどりを噛んで旅ゆく熔岩の上       野澤節子


 こちらは三宅島である。
 火山でできた山で、もっとも美しいのはなんといっても富士山である。その裾野の広さ、なだらかさは他を寄せつけない。だが、海外にまで目を移すと富士山以上といわざるをえないのが、シチリア島にあるエトナ山(3390m)だ。この山は玄武岩からなる円錐形の成層火山で二重の火口をもっている。主火口は中央火口丘にあり、外輪山には200以上の側火口がある。火山部分の面積は1200平方㎞、裾野の周囲は145kmに達するという。噴火の回数はきわめて多く、紀元前475年以降でも260回以上が記録されている。最大のものは1669年で、熔岩は東海岸のカターニアの市街を包み込み、海にまで流れ込んだという。近年では1991年、2001年、2002年に大規模な噴火を起している。つねに噴煙を上げているが、落ち着いたときにはかなり上まで登ることができ、側火口を覗くことも可能である。しかしながら、
この山も離れて見るにかぎる。湾曲している海岸線のお蔭で、少し離れたタオルミナから見るエトナ山はじつに美しい。タオルミナには古代ギリシャ、ローマの立派な遺跡が残っている街だが、なかでもギリシャ劇場は絶景である。観客席から見下ろすと、舞台の背景のようにエトナ山が聳えているのだ。雲がかかりやすいが、海外で見ることのできる最も美しい光景のひとつである。

   

 
 (c)yumiko katayama
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