編集者のブログvol.2   2013/08/06


  
 
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 そもそものはじまりは山本安見子さんからの1本の電話でした。
 「沖縄の、何とかいう島に幻の花と言われる花が咲くそうで、そこを訪ねるツアーがあるの。一緒に行ってもらえないかしら。下がり花とかいうそうよ」
 聞けば2泊3日の沖縄観光ツアーで、その島にも立ち寄るとのこと。しかも、その時に運よく下がり花が咲いているかどうかは、「お花さま次第」とか。
 「幻の花」という言葉はたいへんに魅力的です。
 しかし、咲いているかどうかは運次第ということと、他の観光地はすでに行ったところばかり、ということで即答できず、「少し考えさせてください」と言って電話を切りました。
 電話を切ったあと、何かがもやもやとします。「下がり花」という言葉に、何かおぼろげな手ざわりがありました。

 翌日、安見子さんに電話を入れました。
 「その島でなければダメですか? 下がり花が見られれば別の場所でもいいのでしょうか?」と。
 「私はその花が見たいの。その花があればどこでもいいのよ」と安見子さん。
 安見子さんは絵を描かれる方です。ツアーの広告の下がり花の写真を見て、この花を描いてみたい、と思われたのだそうです。
 ツアーの広告によれば、沖縄の離島に「夜咲く花」で、夜の闇にボーッと花が浮かびあがって、幻想的な光景だそうです。
 「わかりました。必ず咲いている下がり花をお見せします。咲いた、と確認してから連絡します」

 暑い暑いある日の夕刻。
 安見子さんに「下がり花」をお見せする日です。
 待ち合わせ場所は、地下鉄有楽町線の「新木場」駅の改札口。
 こんなところに「幻の花」があるの? と、半信半疑の安見子さん。
 駅を出て、「夢の島公園」の中に入ります。
 「夢の島」はゴミを埋め立てて作られた島で、大きなゴミ処理場があります。
 公園内には蘇鉄やユーカリの木、デイゴなど、亜熱帯の植物がたくさん地植えされています。ゴミの養分と地熱のせいか、どの木も太く豊かに繁っています。
 この日は、ちょうどデイゴの花ざかりの時でした。
 奥に進むと、ゴミ処理場の熱を利用した温水プールの施設と、熱帯植物館があります。
 この日の目的地は、この「熱帯植物館」でした。

 日常は夕方に閉館しますが、夏の間の3~4日間、「ナイトツアー」が催され、夜にも入館できます。
 (現在はナイトツアー以外にも夜に開館している日が何日かあるそうです)
 「ナイトツアー」は、「夜咲く植物」を鑑賞する目的で設定され、館内には何人かのガイドがいて、詳しく説明してくれます。
 折々に「イベント」も催されます。
 安見子さんと訪ねた日は、庭園でベリーダンスが催されていました。

〔ベリーダンス〕

〔安見子さん〕

〔下がり花〕


 安見子さんをお誘いしたのが、この「ナイトツアー」の日でした。
 事前に電話を入れて確認しておきましたので、「下がり花」は美しく咲いていました。
 安見子さんは真剣に花を見続け、ノートにスケッチされていました。
      
                                   〔下がり花の実〕


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