らくだ日記       佐怒賀正美
【作品42】
2009/04/02 (第476回)

 天橋は天の橋立の異名だが、この句では実際の「天の橋立」を踏まえて、さらに「天の橋」へとイメージの展開はふくらむ。北風はこの地上だけではなく、天の橋にまで纏いつくように吹きつけてやまない。その音が天上にもいちめんに鳴り響いているのだと言うのであろう。きびしい心象風景ではないか。なぜここまで自らの心象風景をきびしいものへと突き詰めていかなくてはならないのか、その胸中を推し量りたくもなるが、海に突き出した天の橋立の中にたたずんで、そこから凄絶な宇宙を作り出そうとしている八束の表情を覗うことができる。八束の宇宙感覚とはゆるやかで明るいものだけではないのだ。
     
 














     
   
   
   
   
     
『春風琴』平成9年作 
(C)2007 Masami Sanuka
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