1月29日 第431



 ≪さまざまなる月③≫


  天皇の白髪にこそ夏の月      宇多喜代子
 〈夏の月〉の例句の中でも著名な句です。青年期をとうに過ぎた〈天皇〉のしろがねの髪、そして涼やかな月。この句はいろいろな解釈や評価をされていますが、まずは視覚的な面に目を向け、そして天皇という立場の人を考えてみる、それが大切ではないかと思われます。

  柚子すべてとりたるあとの月夜かな  大井雅人

 たわわに実った〈柚子〉をひとつ残らず取る、木守りになる実も残さずに。しかし、それがかえって月夜の明るさを引き立てています。がらんとした感じがこの句の味わいといえましょう。

  母よ月の夜は影踏みをしませうか   大石悦子

 おそらく、もう相当な年齢に達した母親なのでしょう。その母とそれなりの年齢になった娘が童心にかえって遊びましょう、と誘い合っている句です。実際には影踏み遊びをしなかったのでしょうが、優しい雰囲気のある作品です。





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(C) 2007 Michiko Kai
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